2019-01-01から1年間の記事一覧

内容は覚えていないけど、何か悪い夢を見ていた。そこから抜け出そうと藻掻いているとき、生身の額に誰かの手がふれるのを感じた。「あ、Sくん。変な夢見てたかも。ありがとう」「別に。オレも本読んでて、気になっただけだから」 ベランダに出ると町にヴェ…

ステップワゴンに乗ってドライブに行くといっても、行き先を決めるのは案外難しい。ここに住み始めて十年、車を借りたり、電車に乗ったりしてあちこち出掛けていたようで、考えてみると目ぼしい場所がほとんど残っていないのだ。かといって県外に足を伸ばす…

「ちょっとナビの説明書とりに行ってくる」昨日の夜からこれで二回目。昨日は初ドライブのあと夜遅く家に着くや否や自室の窓へ駆けていき、駐車場に置かれた新車をしばらく眺め、それからそんな言い訳を思いついて家を出ていった。これだけクルマ選びを手伝…

まるい頭の男の子の夢を見た。今日は土曜日だけど、息子は定期的な眼科への通院日だ。朝大人が起きたあと、中々起き上がれない様子で布団の中で突っ伏していて、どうしたんだろう、と妻が近くに寄っていくと、両手を広げ甘えるような素振りを見せていた。病…

車選びも一段落して、本人は軽自動車や軽トラックの選定に入っている。なぜなら、スズメバチ退治には、道具も積めて小回りも利く車両が不可欠だから。少し前までは、「駆除隊はさすがに危なくて無理だから、退治するための薬とか道具とか売る会社を作ろうか…

初めての車の契約に行った日の日記から。10月3日。今日は登山の日らしい。販売店でオプションや保険の説明を受けているときに、妻とヒソヒソと話している気配があったあと、息子が肩をたたいて耳元でささやいてきた。「ホンダセンシング、追い越しの時に、レ…

運動会のために上京し、滞在最後の夜を迎えたおばあちゃんが、寝室から出てこられた。「Sのこと思い出したら可愛すぎて寝られんようになった」僕もそういうことありますよ、と答えると、少し驚いたような、我が意を得たりのような表情で、ある?と言われた。…

運動会。閉会式が引けたあとの校庭に、親と子どもが入り混じった吹きだまりがいくつか出来ている。一つの輪の中に、同級のSちゃんが妻を見つけてカラんでいた。大人の首にかかったネックレスを指で弄りながら、「ねぇ、知ってる?〇ねぇ、リレーの選手になれ…

「この無限の空間の永遠の沈默は私を戰慄させる」(パスカル)。 夜の大空を見上げる目に映る、飛行機の遅さ、つまり空気の緩さ星までの遠さを教わって知る、光の遅さ、この宇宙空間の疎らさ光の点を媒介するこの空間の、暖簾のように間の抜けた緩慢が、星だ…

春にこのキャンプ場で、一家だけでの初めてのキャンプをしたとき、河の畔で遊ぶ子どもたちを見て息子が言ったそうだ。「あ~ぁ、オレにも兄弟がいればなぁ」それを聞いて、なぜかもっと一杯、焚火の扱いをさせてあげようと思った。状況は今更変えられないけ…

招かれて、初めて東京に住む甥の家に遊びに行った。あまり言葉が出ないから、その時の写真を眺めている。青白い水族館の蛍光灯。同じ色に浮かび上がる妹と甥と息子と妻、そして魚たち。

準決勝。レフト側外野席。フェンス際に飛んだ当たりを、外野席から見えなくなるところまで追いながら二度もセーブした桐光のセンター鈴木。 旋風を起こした相模原はコールドで力尽きる。

僕の母親もつれて、神奈川大会の準々決勝に行った。 気温は33℃。スタジアムのスタンドに入った瞬間、覚悟していた以上の暑さと、遮るもののない日射しに足がすくんだと、後日母親が言っていた。そんな中でも応援団は元気に声を上げ、メガホンを振っている。…

朝、学校のプール参加の同意書を書きながら、「あっ。今日、母ちゃんの父ちゃんの誕生日」 しばしあって、照れた時、無理に背筋を伸ばすいつものポーズで、パチパチパチパチ

おばあちゃんから宅急便が届いた。段ボールいっぱいの野菜、いつも書いてくださる息子への手紙。甥がチェスの遠征に出ているこの数日、妻の妹がおばあちゃんの家に泊まりに行ってくれたらしい。成長した甥の姿。まだサナギの息子の将来。今までそんなこと思…

外から眺めるだけという約束で東京ドームに出かける 上空から見ると内側から張り出しているように見える東京ドームの白い屋根。あれは実際、送風機によって高い気圧を保たれた空気が下から支えている。通用口には、隙間を作らない回転ドアがおかれていて、客…

子どもの頃、人にありがとうというのが苦手だった。別段うれしくないわけではない。言わなければならないのは分かっていて、大人に促されて最終的に口にできたとしても、その言葉が口の端に上るまでには、自分でも分からない大きな抵抗があった。今でもそん…

母ちゃん 幸せなことがおこった ダンゴムシが キュウリの実をたべている

イワシの捌き方はお義母さんから教えてもらった。親指と人差し指の爪を立てて、エラのくぼみにさし込み頭部を引き千切る。背骨の端が露出するので、それを掴んで尻尾まで剥がすと、左右に分かれた胴部が現れる。その隙間に指を突っ込んで内臓を一気に掻き出…

僕は思うのだけど、子どもたちの体力に追い越されそうになる辺りから、大人たちは彼らのエネルギーへの評価をためらいがちになるのではないだろうか。「無事に生まれてくれれば」に始まって、「目に入れても痛くない」の時期までは、元気であること、それだ…

すべり込みで間に合った星稜-習志野戦の熱をひきずりながら、請われて売店でメガホンを買った。甲子園のホテルにチェックインして一息つくと、さすがに疲労が姿を現す。晩御飯は神戸で、という話が出たとき、みんな顔を見合わせたけど、結局息子の一声で行く…

年に二回は里帰りをしているから、こうして家族三人で新幹線に乗るのはもう二十回近くになっているかもしれない。朧な記憶しかないけれど、最初の一、二回は確か変わりばんこに膝に抱えてのグリーン車だった。すぐに重みに耐えられなくなって三列シートに変…

一昨日から甥っ子が泊まりにきている。東京で行われているチェスの大会に参加するため。その会場に今日は家族で応援に行った。東京、大田区池上会館。駅から、和菓子屋とか蕎麦屋とか軒の低い建物が並ぶなだらかな坂になった通りをいくと、本門寺という大き…

ここしばらく、メモ帳に日記をつけていた。春休みが近づいて、状況の変化に対応できなくなりつつある自分に不安を感じていた。正しく言うと、状況の変化とは息子の成長のことだ。おはよう、を言っても返ってこないことがある。ありがとう、もあまり言いたく…

近所の食品店で、今日をもって仕事をやめ九州の地元に帰られる店員さんとお別れをした。四年前、大学に進学した娘さんとともに横浜に越してきてから昼間はずっとそこで働いていた人で、アルバイトながら店内の展示や企画に率先して活躍されていた。毎年注文…

いつまでも 判らぬが良し 詰将棋高飛車に説く君の手の 肩に覚えつ

夕方に突然節々の痛みが増し、体温計を見てから不安になった。39.4℃。いつもの頭痛、いつもの悪寒。多分ただのインフルエンザだ。けれども、この病気に罹ると毎度1%ほどの死の恐怖を感じる。重い病気の人には怒られるかもしれないと思いながら、本当にこのま…