ここしばらく、メモ帳に日記をつけていた。春休みが近づいて、状況の変化に対応できなくなりつつある自分に不安を感じていた。正しく言うと、状況の変化とは息子の成長のことだ。おはよう、を言っても返ってこないことがある。ありがとう、もあまり言いたくなさそうだ。彼の知らないことを僕が口にすると、エラそうに、と言われる。
自分の小さい頃を思い出せば、一人立ちのチャンスを窺う少年にとってこれらはみんな自然なことだ。けれどもその準備が自分の中にまだできていない。これまで彼に腹が立ったことはほとんどなかったのに、内心ムカッとしてしまうことがある。寂しさを感じて凹むことも。
お休みなさい、をしてから妻と話し、妻が寝てからも頭を巡らせて考えをまとめた。忘れてはいけないことはメモに残した。
出産後に妻がつけていた日記のことを思い出した。新しく始まった未知の生活の中で、起床時間を記し、ミルクの回数を数え、息子ができるようになったことを書いていた。そうして夜にそれを見返して、まだ言葉をもたなかった息子について分かったことを、語りかけるような文章で書き加えていた。
無垢の時間が終わるときの寂しさを感じていたけれども、別の美しい時の始まりなのではないかとも思う。メモ帳への日記はしばらくつづけるつもりだ。