運動会のために上京し、滞在最後の夜を迎えたおばあちゃんが、寝室から出てこられた。
「Sのこと思い出したら可愛すぎて寝られんようになった」
僕もそういうことありますよ、と答えると、少し驚いたような、我が意を得たりのような表情で、ある?と言われた。実は淡々とそう言った僕の方こそ、我が意を得たりの心境だったのだが。
一緒に行った花火大会を思い出して、その日のうちに、三人で花火を見上げた河の畔までバイクを走らせたこともある。今ここにはない温もりを求めて這いずり回るような女々しい気持ちが、自分だけのものではないことに親しみを感じた。
お義母さんは、いつかその気持ちを俳句に仕上げるかもしれない。