朝、まだ暗いうちに目が覚めた。六畳間に布団を並べていた妹はまだ眠っている。恐る恐る枕の横に手を伸ばすと、コツンと箱に指が当たった。暗いので色は分からないが、ツルツルとした真新しい包装紙にその箱は包まれている。廊下の方へ耳を欹てる。両親はもう起きているだろうか。休みの日は親が起きるまでは自室にいなければいけないのが決まりだ。物音は聞こえない。仰向けに寝直して、天井を見つめる。ドキドキ、ドキドキする。もう一度箱に手を伸ばす。自分が持っているどのおもちゃよりも重い。包装紙のテープが貼ってある折り目に指をかける。でも開けない。今度は箱を布団の中に入れてみる。そうして一時間以上箱を抱きながら天井を見ている。トイレの水を流す音が聞こえた。箱を持ってそっと廊下を歩く。ドアの向こうに白い蛍光灯が灯っている。起きている。ドアを開けて「サンタが来た」と僕は言う。妹はまだ起きてこない。親の布団の上に座って夢中で箱を開ける。あの時の気恥ずかしさと、両親の温かさ、そして何より、布団の縁に平行に、きちっと置かれていたプレゼントの不思議さ。
そんなわけで息子にも初めてのサンタがやってきた。状況が飲み込めず、僕らが昨日あげた靴のプレゼントを包装し直したと理解しようとしたのか、「昨日のプレゼント?」としきりに聞く息子に、「サンタさんが来てくれたんじゃないの?」と示唆する妻のぎこちなさが可笑しくて笑いをこらえるのが大変だった。「與ふるは受くるよりも幸福(さいはひ)なり」。子が親に与えるものの大きさよ。