期待外れの雪を降らせた雲がなくなると、丹沢の山々には渓谷の線に沿って白銀の残雪が光っている。今日は幼稚園の親子マラソン大会があった。子どもと親が一つの輪っかの紐を持って約一キロのコースを走る。たまたま気が向いて両親も招いた。たかが一キロと高を括っていると、ゴールした後に両足の土踏まずと脹脛が乳酸欠乏で激痛、胃が痙攣して動けなくなってしまった。「オレはまだ全然走れる」とピンピンしている息子を見て、年長になって一.五キロに距離が延びる来年のマラソンに不安がよぎる。生まれて五年そこそこの人間に抜かれてしまうような分野で四十の大人が勝負してはダメだということだけど、最低限の体力作りだけはしておかないと。
走る子によって速さも順位もいろいろ。完走する子もいれば、ゴールのテープを見てから泣き出してしまい最後は抱っこされてゴールした子もいる。表彰式で台上の子に送られた拍手は、それぞれが自分の子どもに送っている内心の拍手の写しであって、そこにあたたかい響きが生まれる。あちこちで咲く小さな談笑のまわりの華やぎがとても素敵。
夜になって、小学校の頃がふとよみがえった。運動会の父兄リレーで親父が見せた豪脚にあこがれて、決意して始めた早朝のマラソン。瞼に眩しい東の空の朝日と、左の傍らに付き添うまだ四十だった母親。その息遣いが今日左側を走っていた息子のそれと重なる。