今日は一年でも一番楽しみな日の一つ、夏祭り。家を出る三十分も前からベビーカーに立て篭もり「どんどこ(祭りの太鼓のこと)行こか」と催促していた息子に急かされて外へ出ると、道には会場へ向かう人の流れができていて、遠くからは早くも祭囃子が聞こえる。六時前の空にはまだ夏の光が残っていて、会場には押しかける人々の熱気が充満している。かき氷を食べて体を冷やしていると、恒例の舞台が始まった。小学生によるソーラン、高校生たちによる"Dreamlover"に合わせたR&B風のダンス。すれ違う知り合いとにこやかに挨拶を交わしながらも、妻がイベントの進行を横目に見ながら、息子と参加できる機会が来るのを虎視眈々とうかがっているのは分かっていた。そして日が暮れて、紫色の羽織を着た集団によるハマこい踊りが始まった時、妻は息子を連れて喧騒の中に消えていた。それまで立ち話をしていたのにそのまま放置されて呆気にとられていたママ友が、つられておどおどと踊り始める様も可笑しく、僕は旦那さんに奢ってもらったチューハイを飲みながらそんな様子を眺めていた。さまざまな人と出会って写真を撮り、酒を飲み、踊っているうちに今年も祭りはあっという間に終わってしまったけど、喧騒の酔いが残っていて結局夜明けまで寝付けなかった。床につき、踊り疲れて眠っている二人を見ていたら一層目が冴えた。