今週見た『リンカーン』でスリムクラブの一人が、松っちゃんの著書のまじめな一節を本人の前で朗読してまごつかせるというシーンがあった。ブタの物真似をして娘が笑ってくれた時は、客の前で笑いをとる時よりもずっと嬉しかったと。それは逆に言えば、あれほどの人物が大観衆の前で日本一の技芸を駆使して一身に浴びる喝采よりももっとすごい喜びを、子どもは親に毎日与えてくれているということだろう。息子が僕ら親の元に届けてきた課題は身体が折れそうになるほど重いものではあったけれど、それでも僕らが彼が生まれなかった世界のことを一時も考えることがなかったのは、彼が毎日全身で表現している生命の輝きが僕らの足を前へ進めてきてくれたからだと思う。