desideriusm2005-03-19

ベルリン・天使の詩 [DVD]

ベルリン・天使の詩 [DVD]

今日、奥さんの妹の子供ちゃんがおうまれなさった。一旦出社していた奥さんは、「便乗祭りや♪」と言いながら、これ幸いにと会社を早引きして、ケーキを買って帰ってきた。こっちも知らせを聞いてからというもの、浮ついて気持ちが落ち着かない。このところ毎日のように妹の話をして心配していた奥さんの姿が思い浮かんできたりもした。花粉の被害も手伝って、二人ともがだんだんおかしなテンションになってくる。デジタル放送用のDVD-RAMを買いに行こうと、二人で自転車を走らせる。自然にいつもは通らない道を選んで走る。日陰で子供をしっかりと叱っているお母さんの姿が目に留まる。走り抜けた小学校の校庭に梅の花がちらりと見える。遠く冬枯れに緑の混じった丹沢山系が、灰色の蒸気に包まれている。これが春霞だろうか。見上げた空が青くてとてもきれいだ。
帰ってからはBSでやっていた『ベルリン・天使の詩』を見た。「天使の詩」とはなっているが、この映画、原題はWings of Desire(欲望の翼)である。創世記から、地球を、人間の歴史を見守ってきた天使が、天上の翼を捨てて地上に降りてくるのである。血が流れ、痛み、色と匂いと騒音に耐えなければならない欲望の世界へ。だが、サーカスのブランコ乗りに恋をしてしまったおまぬけな天使は、頭から血が流れても鮮やかな赤を見つけて嬉しそうである。喉が焼けそうな熱い珈琲をぐいぐいと飲み干す。サーカス小屋の跡地の砂を勢いよく蹴り飛ばす。靴の立てる音、鏡に映る自分の姿、水たまりの波紋。永遠の世界に住んでいた彼には全てが楽しい。しかし、当たり前だが彼は無一文なのである。やがて、彼にも、無邪気さを捨てなければならない時が訪れるのではないか。
「もっと知りたいんだ、教えてくれ!」
不安を感じた天使に、同じく天使出身の刑事コロンボは、火のついたタバコを渡してこう言うのだ。
「自分で見つけなきゃ。面白いよ」