朝の犬の散歩でY下さんに会ったと言っていた。何年ぶりか分からないけど、子どもを抱いてこの町に溶け込もうとしていた頃に、スーパーの前の広場で目と目が合って知り合った。赤ちゃん教室でも一緒になり、そこを卒業してからは一緒に教室を手伝ったこともある。妻曰く、戦友の一人。
お互い子が六年生になって、親が買い物に行ってくると言うと浮足立って玄関まで送りに来て、内側から鍵を閉められるところも同じらしい。
「何やってるんだろうね~。ワンちゃんは色々見てるんだよね。何を見てるの?」と言って昔からの笑顔でジローの目をのぞき込む。
ゲーム時間も大変だよね、うちも散歩の担当日にもなかなか出かけない。出かけたら出かけたで、今度は暗くなっても帰ろうとしないから、と妻。
「昔もそうだったね。もう帰るよって言っても、二人とも全然帰ろうとしなくて、外でお弁当買って良く食べたよね」
歩き始めの一二才の頃。母子のバイオリズムが合って、午前中に線路沿いの散歩道でよく鉢合わせた。歩いて自分で坂を上れる喜び、言葉は話せないけれど喃語で友だちと通じ合う楽しさ、電車が通る興奮でいつまでも別れようとしない子どもたちに根負けしてお弁当に出費し、大して話すこともないけれど、互いに肩を並べて過ごしていた新米ママの頃の思い出が二人の母の胸によみがえっている。