夕方に帰宅すると、お母さんはもう到着しておられて、妻と一緒に明日のお弁当を作ってくれていた。巻き寿司やチヂミ、南蛮漬けや果物を載せた大皿がテーブルの上に並び弁当箱に詰められるのを待っていて、その脇の床の上で息子がレポート用紙を十枚も張り合わせた大きな紙を使って船の絵を描いている。家の中の雰囲気がいつもより華やか。前日に、娘の友達のオーストラリア人一家を家に迎えるという大役をこなしたあとにもかかわらず、お母さんは今日朝の五時に和歌山を出てこちらに向かってくれたそうだ。正午に幼稚園からバスで帰ってくる息子を、どうしても妻と一緒に迎えたかったと。
子どもの頃何度も味わった運動会前日のワクワクは、子ども自身の秘めたる思いに加えて、どうやら下準備に精を出す大人たちの意気込みも与っていたらしい。