手術を受けると言ったのは夕食の席だった。肺にガンかもしれない影がある。今手術すれば治る大きさのものだし、検査の結果転移もないから絶対に大丈夫なんだけど、とにかくそういうことになった。

「いつ分かったの?」

三月に最初の検査、六月に再検査をして、ガンの可能性があるということになって、先週がんセンターに行った。手術の日程が正確に決まったのは今日だよ。

「そうなんだ」

一息つき、また食事の手が動き始めた。クイズを出したり、野球選手の打撃のモノマネを披露したりして、その後の夕食の会話をリードしていたのは息子だった。

就寝前になり、暗くした部屋で一人でテレビを見ていると、「(ボクシングの)クロフォード特集録れてたよ。見ます~?」と揉み手で近寄ってきてソファーの隣に腰を下ろした。自分のテレビ時間は過ぎたけど、父ちゃんが見るなら横からオレも見れる。そういう体で、映し出される画面の前の時間を一緒に過ごしてくれた。