体調は悪くない。痛みも熱も、薬で抑えられている。咳は出るけど、手術後の日数を考えれば想定の範囲だ。
そんな中、退院の余韻が冷めて罪の意識が出て来る。
無事に退院したことに関し、まだ入院している人たちに対して。働いている看護師さん、お医者さんに対して。
妻と子どもがお見舞いに来たことに関し、一人で病気と闘っている人に対して。
暖かい生活を再開することに関し、そういう生活を渇望している人たちに対して。
「あなたが自分のことを全部話したら、誰もあなたを羨まないよ。全部話さないから、苦労も知らない、爽やかな、いけすかない奴と思われる。
みんなにデクノボーと呼ばれって、そういうことなのかもしれないよ」