朝、目覚めると日射しと人の気配があって、体を起こすとソファーの上で大きなヘッドホンを頭に載せて箱根駅伝を見ている二人の後ろ姿がある。僕の気配を察すると、妻がヘッドホンを外し席を立って台所へ歩いていく。
今年もそんな正月。神社に参ったり参らなかったり、今年は父と一緒に凧揚げをしたり、もう一年前と二年前の記憶が溶けあってるところがあっても、正月という名のもとに積もっていくものの多さ。前の方から一直線にやってきていた時間が、振り返ると横に置かれて並んでいる不思議さ。
初出勤は「成人の日」明けの十日だった。事務所に出て去年やり残した掃除をし、仕事はいくつかの懸案の見通しを立てることだけをして、電車に乗る。電車の中では誰一人顔を見合わせなかった。初出勤、初通学の一日を終えて帰宅する気持ちは、何千万人、皆同じなのに。