みんなで六畳間で高校野球を見ているときに、妻に義妹から電話がかかってきた。「エーッ!?」という悲鳴のあとに、「K君、インフルで来れなくなったって」。すぐに六畳間でも悲鳴が上がった。息子だけはまだ声も出せずに口を開けている。楽しみにしてきたのだ、一緒に遊ぶのを。大人たちに囲まれて過ごすことの多い一人っ子同士、マイクラして、バドミントンをして、一緒に野球を見て、お風呂に入って。従兄とお揃いのぬいぐるみだってリュックに括り付けて連れてきている。受話器の向こう側からも、悲嘆の声が何本もの線になって飛び出しているのが見える。何とかならないだろうか、と活路を探ってくれているらしい。こういう事情だから大人だってお互いを会わせてあげたいに決まっている。
「でもしゃあないよ、熱もあるんやろ」(仕方ない。会いたかったのはみんな同じ、誰も悪くない)
「家に居て、ゆっくりしとかなあかんよ。あんたも、うつらんように体力蓄えな」(受け入れるしかない、みんなにとって良い方向に)
息子、妻の元に走り寄る
「『姉の命令だから従いなさい』って言って」(オレに兄弟はいないけど、今の母ちゃんの、妹への気持ちは分かる)