昼過ぎに、退院した妻が帰宅した。僕の部屋でパンを食べながらWarriors - Celticsを観戦するという三人の時間を引き継ぎにして、二人が冬日の差し込む居間へ去っていく。一週間ぶりに仕事部屋に聞こえてくる、戯れあうような二人の話し声。
夕方から僕と息子でカレーを作って食したり、みんなでSLの番組を観たりと賑やかに過ぎた一日だった。その日の最後、妻が僕の仕事部屋に入ってきて言うには、息子は寝る前に「手術で死ぬことはあるのか」と、これまでしたことのない質問をして妻にしがみつき泣いていたらしい。一時間以上長引いた手術を待つ間、彼は子どもらしい悪ふざけでずっと僕の気持ちを引いていたけど、あれは彼なりの計らいだったのだろうか。人のことを心配している自分を心配している人を心配して背筋を正す六才児なりの優しさ。それを思うと胸が詰まった。彼の寝顔が見たくなり和室へ行くと、寝床の配置は元に戻って息子は妻の枕に顔をうずめている。大きな手術ではなかったとはいえ、妻が無事に帰ってきてくれたこと、これは当たり前じゃないんだ、と自分に言い聞かせた。