連日の星見強行軍でこの日は城ヶ島へ行った。大きな町から離れた、天の南側が海という立地に期待していたが、結果から言うと空の暗さは田舎の山地に及ばなかった。島の南側に約1kmのハイキングコース(という名のけもの道)が通っていて、そこを使うと東西に長い島を海を横に見ながら横断できる。西側からコースに入り、道にはみ出た枝や草をかき分けかき分け、灯台の明かりの届かないところまで来ると、海側の草木が途切れた空き地のような場所があって、海の上の南天全体が見渡せたのだけど、東の房総半島と西の伊豆半島伊豆大島の町の灯りや、北から滲む横須賀の光が混ざりあって、残念ながら空はうっすらと濁っていた。それでもじっと目を凝らすと、天の川が淡く浮かんでくるくらいの暗さはあるのだが、双眼鏡で見たアンドロメダ銀河もぼんやりした雲のようで、バルジとディスクの境界がくっきりとしてどこからどう見ても銀河だった昨日の富士で見た姿とは比べるべくもない。おまけにしばらくすると西の方から雲が出てあっと言う間に広がってしまったので、あきらめてピクニックシートを敷き、妻が用意してくれたお弁当をつついてくつろぐことにした。風が草を撫でる音。潮騒の響き。海原の上には、水路を航行する船舶と、ホタルのように海を渡る飛行機とが光の線を引いている。そこにかすかに、心をなごませる人の気配を感じた。