正午の東京駅、東北新幹線のホーム。「はやぶさ」が入線すると、「こまち」との連結部分に人だかりができる。夏休み中真っ盛りで子どもの数が多いが、長旅の車中で彼らに見せるためか、とりあえず我が子を脇に退けて一生懸命写真や動画を撮っている親たちの姿に目が留まる。大宮までは荒川沿いにゆっくりと北上し、そこからは関東平野を突き抜け、奥州を駆け上る時速300kmの世界。速度が上がるにつれて時間の進みが遅くなり、車内に眠気が充満してくるのが面白い。新青森の空気は心持ち涼しかった。ホームで煙草を吸ってる人がいる。
スーパーはくちょうが停車した青森駅では、窓越しに八甲田丸の後姿を発見した妻と息子が騒いでいる。二十分後、列車は青森湾を右に見ながら津軽線を北上、途中、小説『津軽』で馴染みになった蟹田駅で止まった。このところ続いていた心を揺さぶるゴタゴタで涙腺がめっきり弱くなっていたから、ホームに立っていた木製の太宰の記念碑を見ただけで本当に涙が出てくる。
午後六時に函館着。路面電車を下りると、地元のおばさんがホテルまでの道を案内してくれる。中学生の柔道部員で騒がしいファーストフード店で食事。函館山で夜景を見てから、札幌の大叔母に電話。二人の娘さんともども、楽しみにしてくださっているとのこと。