この番組は妻も面白がって見ていた。僕が一人で見ようとすると抗議されるので、どこがそんなに面白いのかと聞くと「痛快だから」という返答。
80年代当時、個性的なファッションを競うDCブランドブームが陸の僻地、和歌山にも迫っていた。流行に敏感だった妹はいち早く情報を入手し「アツキオオニシ」のパーカーをゲット。地元の服屋では見たこともないオシャレな出で立ちに衝撃を受けた姉は、負けじと流れに乗ろうとする。そしてどこで聞きかじったのか「モスキーノ」なるブランドの靴下を手に入れて、どうやとばかりに妹の誕生日にプレゼントする。ところが緑地に金色のラインの入ったその靴下を妹が履く気配は一向にない。半年ほどたった頃、姉はショッキングな的な光景を目の当たりにする。床の雑巾がけをする母親が履いていたのが、自分が妹にあげたはずのその靴下だったのだ。事情を質す娘に母答えて曰く「あんた、あの柄は可哀そうやで。あれは可哀そう」。「地下足袋代わりに履いた上に、ダメ出しまでするかァ!」と憤激した姉にとってそれ以来、DCブランドは青春期のトラウマとなった。だからアイビー、プレッピー、ハマトラ、JJなど今やほとんどが死滅した当時の流行が画面に映し出されるにつけ、「バーカ」、「ざまぁ」とほくそ笑みつつ、留飲を下げているのだという。
同時代に生きた人間には、その人の数だけ感想があるという話。