人から褒められたときは、なるべく素直に受け取った方がいい。
人が褒められて一番気持ち良くなるのは、実は自分がコンプレックスをもっているところで、自分が「自然に」手に入れてしまっている能力や性格について褒められても、なかなか素直には受けとめられない。人はすぐこう思う、そんなものは知らぬ間に身に付いていたもので、取り立てて能力というほどの値打ちもない、それよりも、本当は正体を晒すのが怖くて、心密かに必死に埋め合わせ、積み上げてきた今の自分の力を見てほしい。評価が欲しくて、長いあいだ一番努力を注いできたのはそこだから。
でもその努力の目標だった人、自分が弱みを克服しようとして一歩を踏み出したとき、はるか高みにいたあの人の能力だって、自分はその「自然に」映るさまに憧れてきたのではないだろうか。憧れの人がその陰で、あなたが「自然に」自分のものとしている能力について悩んでいなかったと、どうして言えるだろう。
あなたが今、褒められて卑下しているのは、あのときの憧れの人を輝かせていた能力なのだ。その力は、コンプレックスの克服のために費やされたあなたの全生活を、気に留められることもなく支えてきた。一体人の心の中に蓄えられた宝のなかで、「自然な」もの、努力の結晶でないものなどあるのだろうか。
かと言って傲慢になる必要もない。自分の気づいていない能力の分だけ、あなたはあなたが思っている以上の人間なのだから。