あなたが外に向かって、親はかくあらねばならないと言うときは、必ず自分がそう愛してほしかった、そう愛してほしいと思っているとき。
―でもそうだとして、親の愛を心の片隅ででも期待しないなんて人間に可能なのだろうか。
それはできないけど、前に言ったように、どんな親でもその人なりには子どもを愛してたんじゃないかと私は思う。
―だって、ここ数年で言ったって、母親の愛を感じたことなんて何回もないんだぜ。
あなたの愛は私の子育てを助けてくれてるけど、それはあなたの精一杯。同じようにあの人もあの人なりの精一杯。
―そんなバカな。お父さんも?
そう、私のお父さんも。
ヒトラーの子どもへの愛も?
そう。
・・・
目のまえに深い森がある。分け入るのは容易ではない。いつか、妻が見ている調和を、その中の見晴らしから彼女と一緒に見てみたい。