そんなわけで、九才になった甥は段取りをつけてあれこれと息子の相手をしてくれているみたい。あばあちゃんの家に遊びに来てくれる最初の朝、洗面所の鏡の前に立って「お兄ちゃんやから髪型セットせなな」と言って髪をとかしていたんだって(妻の妹さん談)。で、張り切って虫を取ってくれたり、プラレール組み立ててくれたり。プールではすでにバタフライまでマスターしている泳ぎを披露。武勇の数々に四才の息子は目を丸くするしかないのだが、唯一お世話のつもりでやたらと抱っこをしてくるのには困っていたよう。息子は親以外にはあまり抱っこをさせたがらないので。でもお兄ちゃんの愛情も分かっているからうまくNOとも言えずに、自然「への字口」になっちゃってたみたい。じゃあ好きなお兄ちゃんでも嫌なときは勇気をもってNOと言おう、ということになって、一日の最後ラーメン屋へ行ったときに、麺をすする雄姿を見せつけたくなったのか、お兄ちゃんが妻と息子が座っている二人席の横に三人目としてねじ込んできて、これに対しては「いやだよ」ということができた、みたいなてんやわんやのドタバタ劇。なんにせよ、大人では決して与えられない経験というものが子どもの世界にはあって、この洗礼を受けて息子の生命がざわついていることは電話口の声からもはっきりと分かった。お世話をしてくれた甥っこも家に帰って「あー今日もめっちゃ楽しい一日やった。お母さん、ありがとうございました!」との結語とともに眠りについていたそうで。