帰国中の友達と急遽会うことになり品川へ行った。久しぶりに日本に帰って食べたくなる三大食べ物は、ラーメンと寿司と焼肉だと言っていたが、適当な店が見つからなかったのでお好み焼き屋に入り、豚玉とミックスを半分分けにして食べた。去年別の友人に会ったときもそうだったが、中学の頃からの知り合いだと数年程度のブランクがあってもほとんど緊張しないし、会ってぎこちなくなることもない。よおと言いながら肩をぶつけ、並んで歩き始めると、脳の深層に刻まれた、こいつは仲間だという記憶が呼び起されて、違和感無い距離に収まってしまう。魯迅の『故郷』という短編に、その日の昼に出会ったばかりの少年同志が夕方には親友になっているというシーンがあって、この少年期の特権は僕らにはもう二度と訪れないと憂う訳でもなく身に染みたが、旧友と会うとこの自分にもその特権を享受できた時期があったことを思い出させてくれるだけでありがたい。アメリカの田舎では上司との飲みもないから、晩飯には帰ってきて子どもに勉強を教えられるんだ、いう友人の話は、僕にとっては二十五年前の中学生が話す話であって、現実との同期の取れない詩の言葉にように聞こえてくる。