禁煙を始めて半月経過。心の中の餓鬼を刺激しないように努めて淡々と過ごす。仕事のクオリティーが極端に落ちることもなく、首尾は今のところ上々である。
煙草を吸わないと、財布の中からほとんど金が減らないことに気づいた。この二週間で記憶にある出費は、693円の文庫本と、仕事帰りに妻と一緒に食べるために買った95円のコアラのマーチくらいのもの。ゴルフ、ワイン、ファッション、グルメといった十代の頃醜悪と感じた大人たちのVeblen的消費は、三十代になった自分にとっても未だに魅力なく、金の消費としての使い道は若い頃、というより子どもの頃からほとんど変わっていないようだ。仲の良い人とわいわい雑談をしながらつまむのだったら、20円のベビースターラーメンで十分だし、ちゃんとした本(昔だったらぼろぼろになるまで読んだ『よりぬきサザエさん』とか)が一冊あれば一ヶ月分の暇と退屈は消化できる。その中で唯一と言っていい位大人な、ちょっと贅沢な金の使い方が自分にとってのタバコだったわけで、その唯一の愉しみを己から奪い去ってまで禁欲を守るべしとはいかがなものかという…
いかん、また餓鬼が暴れ出したようだ。