もうそろそろ寝たかなと思っていた頃合いに、仕事部屋のドアが徐に開いて息子が顔を出した。
伝言だけ残してそそくさとドアを閉める。
寝んねの時間、妻と見つめ合い、愛をささやき合っていた彼が、「父ちゃんも愛ちてるよ。大好きよ」と呟き、「ちょっといってくるわ」と意を決して立ち上がって、部屋まで言いに来てくれたんだって。和室のふすまを開け、前方後方の確認怠りなく、「出発進行!」の合図とともにすたこらさっさと。
これだけで親は何年も生きていける。うん、父ちゃん頑張るよ。