コマ大数学科ネタ

問題: Aくん、Bさん、Cくん、Dさんが図のように一辺 5mの正方形の頂点にます。AくんはBさんが、BさんはCくんが、CくんはDさんが、DさんはAくんが好きという4人がいっせいに同じ速度で恋する相手のもとへ走り出し相手の動きに合わせて進行方向を変え近付いていく時、最終的に4人はそれぞれどれだけ走ったでしょうか?

僕の答案: 速度をvとすると、dt後に隣り合う二人の距離lは
l=((5-vdt)^2+(vdt)^2)^1/2=5(1-2vdt/5+2v^2dt^2/25)^1/2
dtは微小量であるから一次近似をとると、
l=5-vdt
と、初期の距離5と関係なく、ちょうどvdt分だけ等差的に減少する。
l=0となるまでこれをn回繰り返すとすると、最終的な距離はnvdtと等しくなる。
0=5-nvdt
∴nvdt=5
毎度のことながら、方程式の解法や、式変形、微積分等のテクニックを持たず、定規とコンパスによる素朴な作図と直観だけで解答に迫ってくるたけしのセンスはさすがと感心する。それに引きかえそれほど手強いとも思えないこの問題に二人がかりで挑んで手も足も出なかった現役東大生チームは少し情けないのでは、と思う。

問題: なぜコマ大数学科に出演する現役東大生チームはいつも情けないのか?

妻の答案: この番組のターゲット層は二つある。一つはたけし好きの一般視聴者層で、もう一つは数学好きや東大OBのお歴々。『たけしのコマ大数学科』は数学番組を謳ってはいるがあくまで本質は娯楽番組なので、この二つの層に対して同時に満足感を与えなければならない。ダンカン等が務める「コマ大数学科チーム」は、一般視聴者かそれよりやや低い学力レベルを体現している。彼らが繰り返す不正解は、一般視聴者に「普通分からないよな」という安心感を、たまに出す正解は彼らに逆転の夢をそれぞれ与えている。また「ひらめきの天才」たけしの繰り出すファンタジスタ的解法が、東大生の理詰めのアプローチを凌駕する場面にも彼らは溜飲を下げるだろう。育ちの悪い天才が、温室育ちのエリートを打ち負かすというのは、一般大衆の最も好む図式の一つだからである。ここで「現役東大生チーム」に毎回満点の解答を出すようなバリバリの純金ものをもってきてしまうと、たけしの見せ場が無くなり番組の趣向が失われてしまう。実はこれはもう一つの層にとっても由々しき事態である。彼らは、一ひねりある数学の問題自体を楽しみにしているが、同時にそれにチャレンジすることによって、自分の力を試そうともしている。適切になされた難易度の設定によって、彼らにも正解の機会が与えられる。正解によって得られた彼らの満足感は、「現役東大生チーム」の不正解によって更に水増しされるだろう。あえて冴えない東大生が選出されていることによって、彼らは「最近の東大生も堕ちたものだ」という嘆き節を呟く権利を得ることになる。嘆かわしさという感情は、一種のカタルシスであり、よって一つの娯楽だからである。
僕も見事に番組の趣旨に乗っていたことを思い知らされたこの答案には納得。