朝、三人での雑魚寝から一番遅く、ムクムクと体を起こすと「○くん、父ちゃん起きたよ」との母ちゃんの声。すると息子が寄ってきて「おででと」と言い、頭を撫でてくれた。そのまま二人は、僕が一人で朝食を食べている間に週に一度の親子スイミングに出かけていく。僕も観覧席から眺めるために途中から出かけるつもりだったのだが、しばらくして妻から、今日はスイミングをしないことになった、と電話が入る。なんでも更衣室に入った時から「入んないよ」、「プールちないよ」、「ドボンちないよ」と呟いていて、こんなことは初めてなので「じゃあ今日はお休みしますって先生に言いに行こうね」と息子を連れてプールサイドまで行き、先生に休みを告げに行ってきたらしい。妻としては後腐れなく息子の気持ちを受け入れたつもりだったのだが、その後更衣室に戻ると、息子は晴れ晴れとした表情を見せるどころか、「あとで入るよ」、「ちょっと入るよ」と今度は何やら後ろ髪を引かれている様子。建物を出ても葛藤というか、自分の決断を反芻するような複雑な表情を見せているので、「色々思うところもあるみたいやから、しばらく散歩してから帰るわ」という妻の話だった。そんないきさつを聞いていたから、帰ってきて「プールお休みちたよ」と報告してくれた息子を僕は抱きしめざるを得なかった。「私もさぼり癖があって、そういう性格で得してきたところもあるから、それで良いと思うねん」という妻の言葉に同意しながら、どこかの精神科医が書いていた、不登校の子は親がとやかく言わなくても本人が一番学校に行かなきゃいけないことを分かっている、という話を思い出していた。