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今の町に引っ越してからもう一年半になる。移ってきた当初は親以外に知る人のいなかったこの町の、気取ったような空気がとても嫌いだった。それが今では、朝、昼、晩それぞれの風景の美しさを言葉にして人に紹介したいほどに、この町に愛着が持てるようになった。そう思えるようになったきっかけの一つはもちろん、主に息子を通して知り合った数々の人たちとの出会いである。今日風呂に浸かりながらぼんやりと彼らのことを考えていたら、ふとこの人たちにちなんだ川柳を作りたくなり、そう思った途端たちまちに詩想が奔流のように溢れだして、ものの二三十分のうちにちょっとした「まちカルタ」が出来上がった。「整いました、整いました」と言いながら次々と辛味の効いた句を繰り出し満足気な哄笑を連発する僕に、妻は「実は性格悪い?」と言ってヒイていたけど、文意は川柳特有の諧謔性を持たせるための誇張を含んだものと予めご了承ください。この句の一つ一つをこの町に住む愛すべき彼らに勝手に捧げます。
い イタイのに本人幸せペアルック
か 片思い返し欲しさの減らず口
き 来たいだけありがた迷惑和菓子かな
こ 子のためなら何でもクレーム野獣ママ
し 出産後一年足らずで肉弾戦
せ セレブとの噂の帽子ダイエー製
つ 通勤の愛の形は投げキッス
と 取り柄なしやむなくうんこの色自慢
は 母親も動いてるだけと気付いてる
む 娘は父似役得ゼロのスチュワーデス
ゆ 遊園地着くなりギャン泣き親のエゴ