ワールドカップも準決勝まで来ると、星取り表的にはよりハイレベルな組み合わせが実現していくのとは裏腹に、お祭りとしての熱気や興奮はすでにピークアウトしてしまったような寂しさが漂ってくる。多くのサポーターにとってすでに自国の代表チームは戦いの場を去っているから、準決勝や決勝などは言ってみればもう他人事に過ぎないのだし(しかしこれは考えてみると先進国にのみ許された贅沢な倦怠というべきもので、そんなものを僕らは正確には2002年まで知ることがなかった)、純粋な競技的視点から見ても、グループリーグ、決勝トーナメントと5戦に及ぶ決して容易でない試合を勝ちぬく中で、生き残ったチームといえどチーム力の全貌は大方明るみに出てしまっているから、体力の消耗も含めポテンシャルが汲みつくされた状態での対戦となってしまっていることも大きいと思う。そして何より、4強という到達点が、本音レベルでは全ての国にとって十分に満足できる結果であるという側面もあるはずだ。岡田監督が4強という目標を掲げた時、少なくともその時点では多くの人が本気と受け止めなかったけれど、それはFIFAランキング40位代の小国が、最低目標としてそれを掲げたと受け止められたからで、最低目標としての4強ということならば、それはブラジルやスペインといった、最高目標として優勝を狙っている大国と同じレベルの目標設定になってしまうからだ。最多優勝を誇るブラジルでも過去3.8回に1回しか優勝できていないことを考えると、全参加国を通じた目標のmax-min値(最高の最低目標)はちょうど準決勝進出ラインということになるのだと思う。もうワールドカップも3位決定戦と決勝の2試合のみだが、3決がエシキビション・マッチのような友好的なものになってしまうのは仕方ないとして、決勝に進んだオランダとスペインには、真に偉大な結果を得るために奮闘する姿を見てみたいと思う。これまでunderachievementの方が多かった両国にとって、決勝は自国のサポーターの期待さえ超えた場所での孤独な戦いになるだろう。どう戦っても勝つか負けるか二つに一つだとか、あそこら辺に蹴り込めばひょっとしたら、といった確率論的願望を最後まで振り払うことができたチームがそれだけ勝利に近づいていく。チャンピオンシップというものはそうしなければ獲得できないものだということを、僕は94年の決勝の、まるで確率のタナトスに魅入られたとしか思えないFKから学んだように思う。