赤塚不二夫で思い出したことなど

さあリングサイドを見わたしてみますと、次なるトーナメントを闘おうというフランス勢が陣取ってじーっとリング上の動きを見据えております。あの「人間は考える葦である」で有名な、そう、パスカルがおります。そしてパスカルの隣は…、バカボンのパパがおります。そうです、あのかつて都の西北早稲田大学の隣のバカ田大学を卒業いたしましたバカボンのパパは「人間は考える葦である」に対抗いたしまして、「人間はカンガルーの足である」、この名言を吐いたことから特別シードとしてここに参加している訳であります。早くもパパ叫んだ!「西から昇ったお日様が東へ沈む、これでいいのだ」。遂に出ました、従来ならば東から昇ってそして西へ沈むという、そういった事実を基に一定の法則を導き出して、そしてそれを普遍的なものとするという正に帰納法的な因果関係、これを一応ひっくり返しまして、西から東もありうるんだという事実前提を認めて、最終的な結論をも認めていくという、正に演繹法的な全面肯定論でバカボンのパパ完全武装している訳であります。パパの隣は、実存主義でおなじみのあのサルトルが事実上の奥さんボーボワールとともにパリのカフェごとこちらに陣取っておりますリングサイド。その隣は誰だ?おお、孤独な佇まい、北欧の哲学戦士キルケゴールの姿が見えております。あの『死に至る病』の中でキルケゴール、余りにも明言を吐いております。人間に関する定義、これは皆さん聞きごたえがあります。「人間とは精神である。精神とは何であるか。精神とは己、自己である。では自己とは一体何であるか。自己とは一つの関係それ自身に関係していく関係である。あるいは、関係においてそれ自身に関係していくこと、そのことである。したがって己、自己とは、関係そのものではなくして、一つの関係それ自身に関係していく関係である」。正気の沙汰か、キルケゴール。「これでいいのだ」とバカボンのパパ一人がサポートにまわっております。
『トーキングブルース』(2000年) / 古舘伊知郎

いや、君たちがやりたければ何をしてもいいのよ、別にぼくちゃんは。イシハラは揺り椅子から立ち上がってカネシロからリモコンを奪い、チャンネルをNHKからテレ朝系に替えて、音のない画面で武装ゲリラについて口をパクパクさせている女子アナを見ながらそういうことを話した。ただ、今でも脳裏に染みついて忘れようにも思い出せないのは、こいつらが反乱軍だってことで、それは嘘なんだもん。だって反乱軍だったら自分の国で反乱するでしょうよ、普通は。こいつら、なんか変。
『半島を出よ』 / 村上龍

松本: こないだBSでさ、赤塚不二夫の特集みたいなんやってて、二時間くらいね、これちょっとオモロそうやなと思ってビデオとって見たんですけど、面白いね〜、あの人ね。変わっとるな〜
高須: たとえばどんなん…
松本: あの人二回くらい結婚してるんですけど、びっくりするで、二回目の結婚ね、なんか保証人みたいのいるの?結婚って。二回目の結婚のその保証人みたいなんは、一回目の嫁さんがやってんねんで。
高須: えーもお〜・・・( ̄  ̄;)
松本: ふふふ(笑)

松本: で、今どうしてはるか知ってる?
高須: 知らん
松本: 意外と語られてないやろ?六年前に脳内出血で倒れてはんねん。そこから意識がもうないんですよ。
高須: えーーー!
松本: 六年間もう病院に寝たっきりなんですよ。知らんかったやろ。オレその何年か前に対談してんねん。
高須: どんな話してたん
松本: いやね、オレ正直そんなにはっきり覚えてないねんな〜。その何年か前にもTBSかなんかの番組で。あん時よう酔うてたやろ〜
高須: めちゃめちゃ飲んでた。
松本: めちゃめちゃ酔うてたよな。オレ赤塚さん大好きやで、めっちゃ好きやし尊敬してるし、オレ天才やと思うけどド突いたろ思うたもん。
高須: そうやろ。オレスタッフで打ち合わせしてる時から、「わ、この人あかんわ。なんやのこれ、やる気あれへんやん」って。
松本: だんだん途中で腹たってきて。こんな感じで仕事してたらあかんわ、思って、オレ途中で腹たってきてんけど。まあ今考えたらトータル、まあな。でもオレはちょっと愛すべき人やと思ってんねんけどね。
高須: どないやねん
松本: ふふ(笑)。それでな、そのな、六年前に脳内出血で倒れて病院に運ばれた時に、なんかそういうので連れて行かれるやん。
高須: 担架みたいな
松本: 担架みたいなんで。こういうタイヤの付いたやつや。で、看護婦さんがわぁ〜って連れていくやんか。
高須: うんうん
松本: その意識がなくなる前の最後の一言なんやと思う?
高須: 何て言ったのあの人?
松本: ふふ。もうびっくりするで。
高須: ニャロメ?
松本: はははは(笑)これクイズにしたって絶対当たらへんねん。
高須: でもあの人らしい言葉やね?
松本: まあらしいっちゃらしいんか分からんけどね。オレはそこまであの人を知ってるわけじゃないけど。
高須: バカボン遊ぼう!
松本: まあそんな風に思うやろ
高須: うん
松本: その看護婦さんのとこ見てね、「オッパイ」って
高須: はははは(笑)
松本: ふふふ(笑)で、「ふざけないで下さい!」って怒られて、それが最後。。。
第339回『松本人志の放送室