今日は大型自動二輪教習の卒業検定。集合時間の30分程前に教習所に入り、コースの下見をするために外へ出ると、早朝にもかかわらず車庫から出された教習用自動車が至る所に停められていて、指導員たちが洗車や整備を行っている。所内の草刈りをしている人もいる。検定コースは2通りあって、どちらで検定が行われるかは直前に発表されることになっている。どちらも教習中には走ったことのないコースなので、念のため曲ったことのないコーナーや、車線変更のポイントまで歩き、そこに立ってイメージを作ったりしてみる。同じことをやっている女性が一人、後から男性が一人。
指定時間に教室に集合してそこから説明が30分。一度僕が教わったこともある指導員が、検定中止項目や減点項目について比較的詳しく説明してくれる。合格点は70点。減点を重ねていっても余裕のあるラインだから、満点を狙うよりはとにかく検定中止にならない運転をすれば良いと強調される。昨日の教習中、一本橋で粘りすぎてエンストをしてしまったことがあったので、これを聞いて少し気が楽になった。今日の受験者は僕を含めて6人いて、普通自動二輪が3人、大型が2人、小型が1人。僕でない方の大型受験者は、やたらとはきはきした口調で返事や質問をする若い男で、今時珍しいなあと思っていたら、指導員との会話で、どうも警察官らしいということが分かった。白バイ隊員でも目指すのかどうか分からないが、警察官が教習所の教官の説明にうなずきその指示にしたがって動いてる、の図はなかなか面白かった。周りの人間を観察していると、みんな一様に緊張している様子が伝わってくる。
僕の順番は5番目だった。発着点近くに立って前の人たちの実技を見ていると、ここまで緊張するか、というくらいにみんなガチガチだ。警察官君も、サイドスタンドを外してから乗車するようにと今さっき注意されたにも拘らず、しっかりとサイドスタンドを立てたまま乗り込んで、慌てて外そうとして立ちゴケしそうになってるし。発信合図を忘れて発車してる人、ゼッケンをねじり鉢巻き状態で装着しているのに気付かず注意されている人もいた。僕ももちろん相当緊張していたが、さすがにここまでではないわ〜、と思ってからは不思議なくらいリラックスすることができた。順番が来るまでの間、周りの人にちょっと声をかけたりしてさらに気持ちを落ち着かせる。とにかく落ちたり、当たったりしないように気をつけて、完走を目指して頑張ろう。
結局、一本橋を早めに通過してしまったのと、スラロームが多少ぎくしゃくしていたこと、右折の合図が早すぎたかなと思ったのがあった以外は普段通りの走行をすることができた。停車してから検定員に簡単なコメントをもらうのだが、一本橋が8秒台だった(規定では10秒以上)ことを言われたのみだったので、この時点で、やったかな、と思うことができた。約一時間の待ち時間があった後、再び教室に集められて結果発表。普通二輪の一人を除いてみんな合格だった。その人だけ退出を促されてからまた説明会が始まって(これには一応卒業式という名が与えられていた)、運転免許試験場へ提出する書類をもらったり、申請手続きについて説明を受けたりしながら、3週間の教習生活は坦々と終わっていった。
帰りしな、駐輪場で警察官君と鉢合わせた。挨拶を交わした後、彼が派手なストライプ柄のヘルメットをかぶり明らかにマフラーの改造されたストリートバイクに跨って、爆音を鳴らしながら走り去っていく姿には思わず笑ってしまった。まあ公私を混同しないのは良いことなのだろう。