低廉労働力によって利益を上げる自社やスポンサーの経営姿勢を憚って、民放では事実上タブーとされているワーキングプア問題をNHKが取材した作品(NHKの経営がこの問題の助長にどの程度まで寄与しているのかは知らない)。以前はYouTubeで三部作のすべてを見ることができたようなのだが、現在アップされているのはこのうちⅢのみ。僕は一週間ほど前にⅠを見たのだが、この出来も素晴らしかった。このような作品がフリードメインに置かれることは、人々の啓発を促し、NHKの評価も高めることはあっても、誰がしかの重大な利益を侵すようなことはあるまいと素朴に信じているのだが。
ともかくもこれはドキュメンタリーとして素晴らしい出来です。特にⅠにも登場した路上生活者岩井さん(仮名)のゆるやかな恢復を追う目線は客観的でありながら、文学的な繊細さすら感じさせるものだし、番組の最後で鎌田靖キャスターが放つコメントは、仕事と社会の関係について、ドキュメンタリーとしては異例なほど深い認識に達している。いつ見れなくなるかわからないので早いうちに、できるだけ多くの人に、時間を割いてでも見てもらいたい作品です。