先週末は友達と二人で河口湖へ行ってきた。会社の健保が提供しているホテルの宿泊サービスに5倍の抽選をくぐりぬけて当たったらしい。意外にもこういうことはもう何度もあるみたいで河口湖はもう5度目くらいだと言っていた。いつもは別のグループの仲間と連れ立って3, 4人で行くところのようだったが、今回は、前に調子が良くないとこぼした僕に気を使ったのかどうなのかわからないが(もちろんそんな言及はないけど)、自分が誘われて行くことになった。受付のある建物の外で1人待っていると、通りがかった客の1人に「こんにちは」と挨拶をされたので「こんにちは」と爽やかに返した。慣れた感じからすると常連のようで、なぜかそんなやりとりには変な懐かしさがあった。立派なリゾートホテルなのだが、確かに自分としてはどうもバブル的な陰影を感じないでもなかった。それが、テレビドラマなどからの影響で培われたバブル景気のイメージから来るのか、階級無き(伝統的な階級文化がない)国の人間にとって所詮はリゾートなど借り物の衣装に過ぎないという偏見から来るものなのかはよく分からない。それはともかくとして、30を超えた男が買出しで買い込んだワインやチーズを食しながら夜明けまで漫談するには立派すぎるホテルの立派すぎる一室だった。一風変わったレイアウトの室内にはベッドルームが2つ(ベッドは4台)と、ソファーを2つ備えた広々としたリビングが1つ。窓際には更に四畳半ほどの畳の間に重厚な四角い卓と座椅子が置かれていて、戦前のアジア主義者たちが山荘での密談にでも使いそうなスペースが誂えられていた。窓から外を眺めると中庭の木立が窓枠と平行にせり上がって見える。夜中から明け方にかけて雨が降り、砕けた雨粒が雷の光を曇らせた。
結局今回も残念ながら富士の全体を間近で見ることはできなかった。先月御殿場ツーリングに行ったときも高速に乗った辺から急に雲が出てきてしまったのだが、今回も岐阜に大雨を降らせたという天候の影響をもろに受けてしまった。夕方湖畔を歩いていたときは、富士のある南の方角だけが幕が下りたように雲がかかっていた。小ぶりな野鳥が何羽も軽快な飛跡を描いて飛び交っていて、そこに雲間を通して入ってくる西日の一角が青く輝いているだけだった。翌朝、雨が上がって忍野八海から見た富士も上半身に分厚い雲を纏っていた。帰路も終盤になってようやく空が晴れてきた。寒川近くの中華料理屋の窓に小さくなった富士の全体が映っていた。