大日本人

ヒーローものの範をとりながら、ふてぶてしい笑いと猥雑な風刺・諧謔で全篇を埋め尽くす、という意味では現代のパンタグリュエル物語とでも呼ぶべきか(誉めすぎ?)。都会の片隅に立つ廃屋然とした一軒家、という重要なモチーフには、日本人でありかつ芸人である監督自身が投影されている。地政学的な動向に翻弄され簒奪される日本人と日本社会、大衆エンターテインメントとして己の特殊能力を利用され吸い尽くされていく芸人の奮闘と悲哀を、己の笑いの能力も誇示しつつ同時並行的に描ききろうとする内容は端的に過剰。だがその分、野心は十分感じられる内容だった。
でもだとすれば、吉本の内輪の馴れ合いとも受けとれる、今や紋切り型ともなったくだんのキレ芝居はあえて控えても良かったのでは?
とりあえず今の段階では自分には衝撃の問題作という言葉しか浮かばない。見終わって数時間しか経ってないから、見るべきとか見なくていいとか自信をもっていえる状態ではないけど、これから見ようかどうか迷っている人は、とりあえず人はどういう作品を見終わったときにそれを「問題作」などと表現する気になるのか、その辺を参考にしてほしいと思います。