予選リーグの48試合が終わって「これがワールドカップだよな」というさすがにsolidな16チームが決勝トーナンメント進出を決める中で、大会を去ることになった16チームもそれぞれに趣きのある敗者の相を見せてくれましたね。セルビア・モンテネグロと並んで最も無残な形で壊滅した日本については、「中田さん程度の個性も受け入れられずチーム内で浮いた存在にしてしまうようでは組織としてあまりにも悲しいな」と、呟くにとどめておきたいと思います。自分も4年間熱心に応援してきたわけではなかったし、自国の代表チームが、文字通り自分たちの存在そのものを代表しているんだということさえ忘れたままただ痛烈に罵倒したいという歪んだマゾヒズム自体が、今国中を不機嫌にさせている屈折した国民性と深いところでつながっているような気もするので。
フランス大会の時から感じていたことですが、今日トーゴvsフランスの試合を見ていて、アフリカのサッカーは本当に楽しいなと改めて感動してしまいました。彼らのほとんどはヨーロッパのクラブに所属しているから、普段からリーグ戦やカップ戦でプレーを楽しむことができるのだけど、当然クラブは白いフランス人やイタリア人、スペイン人との混成なので、これだけ黒々とした人材がチームとして戦う雄姿はワールドカップでしか見られないわけです。彼らのプレーの魅力はなんと言ってもその守勢から攻勢への反転の瞬間でしょう。中盤の相手にヒョウのように忍び寄って信じられないスピードでボールを奪うと、そのまま伸びのある大らかなフォームで疾走を開始する、味方選手もボールを持った仲間につられるようにフィールド一杯に広がって後を追う。この光景にはまるで逃走するインパラの群れを見るような息を呑むものがあり、南米風の小回りの効いたドリブルとは違った美しさに溢れています。そして彼らのテクニックからすると不思議なくらいの決定力の無さ、詰めの悪さ。中にはドログバのように恐ろしい決定力をもった選手もいるにはいますが、カメルーン、ナイジェリア、セネガルが代表枠からこぼれるという激戦を勝ち上がった5チームのうち結局1チームしか決勝トーナメントに進めなかったという事態は、結果を出すことに対する彼らの意外な淡白さを証明しているように思えます。「ボールを持ちたいんだ!俺に渡せ!」という無邪気なエゴイズムと、結果への淡白さ。彼らはボールをもって走ることをこそ最高の楽しんでいる、ゴールによって最前線でのプレッシャーから解放される西洋風のカタルシスとも、狭い小道に細かいパスを通していく南米風のシンコペーションとも違った愉楽を彼らはサッカーに見出したのだなと思うとある種の感動を誘われます。今日のトーゴ-フランス戦。トーゴは1960年にフランスから独立したそうで、トーゴの中にはフランスに強い想いを抱いている人も多いらしく、彼らはこの試合を「兄と弟の闘い」と呼んでいました。結果は健闘虚しく0-2の敗戦。けれどもスタジアムのサポーター達は試合が始まった時もリードを許した時も、ずっと訳の分からない楽器を鳴らしながら旗を振って楽しそうに踊っている。試合が終了して初出場だった本大会が直前の監督辞任と3連敗という傷心の結果に終わった時も選手たちは悔しそうでこそあるものの呆然・憔悴の呈とは程遠く(辛気臭くない)、フランス人の胸をこぶしで突いて「いいゲームだった、次ぎ頑張れよ!」と激励している様子。その間もスタンドでは愉快に国旗が舞っている。本当に敗者の姿は様々だなあと思いながら半ば羨望の想いで画面を見ていました。
アルゼンチンを前半の攻防で圧倒し最も魅力的だったコートジボワールは負けてしまったので、決勝トーナメントではとりあえず唯一勝ち残ったガーナを応援しようと思っています(ブラジル戦か…)。
アフリカ最高!