SNSで友達申請をしようかどうかを迷ったとき、断られたらムカつくような奴にはやめておけ、という自分なりのルールがある。片思いを維持できるくらい好きな相手じゃないなら、わざわざ連絡をとって今の人間関係を転位させる必要もない。それぞれに築いてきた繋がりの中で、お互いに暇ではないのだから。
今日、丸の内で21年ぶりに会ってきた同級生は、このルールに沿って僕の方から誘った。高校時代に所属していた空手部の主将で、今はJRAに勤めている。昔、格闘家の角田信朗が幼少時代のガキ大将と再会するというテレビの企画があって、そのときの角田の表情が、現時点での力関係とは無関係に、恐怖に引きつっていたことが印象に残っているが、それほどではないにしても東京へ向かう電車の中では軽い緊張感があった。再会を祝ってからも、どちらかと言えば彼主導で話が進む。高校の同級生で、僕に対して自然に上位のマウントをとってくる人間はあまり多くない。
お互いの近況を話し終えたあとで、彼が胸の中にしまっていたような話をしてくれたのは嬉しかった。高二の夏、ボンタンを履いて修学旅行の集合場所に現れた彼に、教師は「お前なんか帰れ!」と罵り蹴りを見舞った。上等だ、とばかりにそのまま家に帰ってしまった彼。そのとき、「途中からでもいいから参加しろ、みんなで一緒に修学旅行をやろう」と家まで電話をかけてきたのが、後年脳出血で亡くなった野球部員だったこと、すでに北海道の奥まで進んでいた一行を追いかけるべく、釧路空港に降りたった彼を待っていたのが、鈍行電車の車窓から眺めた湿原の光景で、それがあまりにもきれいだったから、入社後に皆が嫌う北海道への赴任が決まったときにも、一人喜んでいたこと。
男気があって、からっとして、奥さんとの仲もよさそうだったけど、しかしアレ、女遊びは相当やってるな。キャバクラにも風俗にも行ったことがない、と言ったら急にその手の話を引っ込めていたけど。