周りの人からよく「怒ることあるの?」と言われる妻だけど、人間だから怒ることはある。でも僕もそして息子も、妻に怒られるときはちっとも傷つかない。ハメを外したくなったときの自分たちの心の動きを、無言のうちに分かってくれていると、妻に対して安心しているから。それで、やっぱりあの不作法はダメだったんだと心の中で反省して、もうやるまいと誓うのだけど、まだ気まずさがあるから素直に謝れずに冗談を飛ばして取り繕ったりする。するとそんなことは優に見透かした彼女から、小突くようなツッコミが飛んできて、くすぐったいからこっちもさらに応戦したりする。気づけば、さっきまでの空気はもうとっくにどこかへ流れている。皆が冗談の世界の住人になっている。