人気のない坂道を散歩をしながら、気持ちの良い日よりだと思い、らーらーらーららら、らららー(勝手にシンドバット)と歌い出したら、妻もそれに合わせて口ずさんできた。
ふと背中に殺気を感じて慌てて後ろを振り向くと、見知らぬおばさんが無表情でうちらの至近距離を追い抜いて行く。
「何や、人おるやん!」
「だから私も歌ったの」
「え、」
「見捨てないために」
「…」
「びっくりするくらいのノリやったから。らーらーらーの前のタメも半端なかったし。これは可哀そうやなと」
と含み笑いで話すこの人が、優しいのかドSなのかよく分からなくなった。