一緒にお風呂に入りながら掴まり立っちしている息子の姿を見て、ふと動画に収めておきたくなり、妻にカメラを持ってきて撮ってもらうことになったのだが、やれピントはちゃんと合ってるかだの、その角度だと僕の局部が映ってしまうだの撮影に注文をつける僕の圧のこもった声が、せっかくの貴重な映像に混入してしまい、二度も撮り直しするはめになった。あとで妻とその映像を見て驚いた、というか笑ってしまったのは、冷静を装いながらも明らかに苛立ちが漏れてしまっている僕の顔の表情の作り方が、申し訳ないことだが、妹がごくまれに父親や旦那さんに向ける顔つきにそっくりだったことだ。
ちなみに最後のテイク3で撮った動画は、"口を開けば圧"状態に入ってしまった僕が不自然なまでに口をつぐんでいるので、妻の状況説明と息子の湯船をたたく音だけが、うなだれた僕を背後にこだまするという、全く空々しい代物に仕上がっていた。このテイクを「では仕切り直しで〜す」の言葉で始めた妻には完全に一本取られたといったところだ。