6時過ぎに横浜へ出て、変圧器などの買い物。テーブル席で気楽にちらし寿司でもかき込むつもりですし屋に入ったら、予期せぬアクシデントでなにやら賑やかなカウンター席に通されてしまう。席に座ると目の前には父権漂う職人さんが仁王立ち。あ、これはこの人に一個一個注文していかなきゃならないパターンかな、慣れてないからどうしようかな、と思っていると妻は予想外のガッツを見せて初志貫徹でちらし寿司を注文。それに対して注文を受けた職人や、掛け声でそれを知った厨房の奥の方の職人たちから「え、ちらし?」「本当にいいの?」等のリアクションが巻き起こったので、僕のほうははあっさり挫けて一個一個注文するやつにして、ついでにそのつもりもなかったのにビールなんかも頼んでしまう。メニューを見ても正直難しいネタはわからないので(魚の知識に関しては小学校からほとんど進歩していないと思う)、エビ、いくら、とろ、うに、ととにかく理解できるものから順番に頼んでいく。目の前に切り身が置かれたガラスケースがあって、それを見ながらこれは何と言う魚だとか、このサバさんは普段スーパーで買うのよりおいしそうだとか、妻から色々とアドバイスを受けながら、なんとか型どおりに数を頼んでいく。途中であら煮とあら汁を注文するとそれにも厨房内から驚きの声があがるが、その意味するところは分からず。こちらはすし屋のモーレス(習律、慣行)に関して全く知識がないのだから仕方ない(と思うことにする)。あるいは全然問題なくて意識過剰なこちらが勝手にそんな気がしただけなのかもしれない。小田和正に似た父権職人は、となりのお客の集団と野球の日本代表監督の人選やら、大相撲の不祥事やらの話題に花を咲かせている。こういう場所では話のネタも大時代なものになるようだ。時々こちらにも声をかけてきてくれるが、大体は妻が受けて、僕の方は終始笑とけ笑とけという感じだった。
適度に酔いもまわって涼しくなった横浜の街をぶらぶらと歩く。夜も更けて人も少なくなった電器店の壁に何百というヘッドホンが架かっていて、社会進出した女性たちが働いた交換室あるいは、冷戦期の諜報機関の盗聴室を思い起こさせる。もちろん聞こえてくるのは生の声ではなくて試聴用のデモ音楽だ。全てのヘッドホンから同じ曲が流れてくる。これを二人で片っぱしから聞いて回った。その時流れていた曲の一つ。

イオニアの(SE-A1000)を買って帰る。