とあるミーティングにて。
上司「まず私から手短に一言だけ言わせてください。皆さん、はっきり申しまして私たちの評価は地に堕ちています。この前など『あなたのプロジェクトの信頼性はゼロだ』とまで言われました。正直私は悔しかったです。勿論私は皆さんが一生懸命頑張っているのは知っています。だからこそ悔しいのです。皆さんがこれだけ頑張ってくれているのになぜあんなことを言われなければならないのでしょう。ですからここは一つ根性を見せていただいて、全面的なご協力をしていただきたいと思います。私たちのプロジェクトは、この一ヶ月、いや、一週間が正念場です。天王山です。仕事に対する文句ならプロジェクトが終わったあとにいくらでも私に言っていただいて結構です。どんな文句でもお受けします。でも現時点ではどんな文句を言っても何も動かないフェーズに入ってしまっています。ですので、ここはもう黙って全力でやっていただきたいと思います。年末に関してですけど休みをとるなとは私からは言いません。当然権利もあります。ですが心意気のある方は是非出てきてください。是非とも固い決意をもって一丸となってやっていきましょう。以上です。」
その後、同僚とコーヒーを飲みながら、
「そういえば、さっきの上司、名前何ていうんだっけ?」
「…」
「ねぇ、さっき吠えてた人、あれ誰だっけ」
「…」
「オレやばいかな?」
「…。いや、オレもさっきから思い出そうとしてるんだけど出てこないんだよ。」
「なんだよ…。でも本当に出てこないな。こりゃやばいかもしれん。」
「『根性見せていただいて』っていうあの顔はありありと浮かんでるんだけどね。」
「そうそう。」
「一言、って言ったわりにやたら長いし。」
「長かったね。『プロジェクト』って言葉を『戦争』って言い換えてほしかったよ。あ、思い出したかも。」
「何?」
「平野じゃね?」
「いやー、それは違うよ。ピンとこないなぁ」
「いや、平野だって。ピンとくるよ。間違いない」
「平山じゃなかったっけ?」
「平山はないでしょ。平山って知人オレいないもん」
「平野よりは平山だと思うけど…」
「じゃあもう、あいうえお、から順に考えていこう。あ…、い…、う…。あ、キタ!」
「思い出した?」
「カンッペキに思い出しちゃったよ。内山」
「あーーー」
「凄いね、感動するね。」
「キタね〜」
「なんだかんだで、平山のほうが近かったね。このプロジェクト入ってどのくらい?」
「うーん、9ヶ月くらいかな」
「あー。オレまだ5ヶ月だもんな。さすがに一日の長があったね」
「いやー、それほどでも」
(文中仮名)