学校での駅伝大会。結局今年は何回やったんだっけ。
レク班のメンバーが交代で企画を決める学級イベント。先生は見守るだけで生徒が自分たちで運営する。そのレク班にちょっと太ったひょうきん者の男の子がいて、その子が持ち出す企画がいつも駅伝と決まっている。レクとはいってもレースは熾烈なのだが、その子だけ計測係をやって涼しい顔で「おつかれ~」とくるから、へたり込んだみんなからブーイングが起こるらしい。そうは言っても体育とはちがう刺激があるみたいで、駅伝のあった日はいつも話をしてくれる。
クラスの中で速い子が数人選ばれて、彼らをリーダーとしてドラフトでメンバーを決めていく。息子はいの一番にリーダーに選ばれたのに、1回目は今日は脚が痛いから走らないかもと心を揺らしいていた。以前なら焦ったかもしれないけど、そうなんだ、自分で決めたら良いとだけ言って送り出せた。足の痛みの具合も、アンカーとして走るプレッシャーの程も当人にしかわからないから。
結局その日は、レク班の子に代わって計測係を務めたらしい。レク班のひょうきん者が代わりに走ってくれた。春の風吹く砂の舞うグランドで、ストップウォッチを片手に何を思ったのか。メンバーの反応、走りきった子たちの充実感、走らなかったことの後悔。無理に走らされていたら経験できなかったことばかりだろう。自分で選びとらなければ本心から後悔することはできないし、押し込まれて、次こそは!と反動する力を自分のものにすることもできない。
プレッシャーのかかる試合前に朝倉未来が持ち出した「冷静さと狂気」という表現はとても良い対になっていると思う。特に「狂気」の部分が良い。これが「根性」だと、苦しんで絞りださなきゃいけない感じがする。狂気という言葉には、内側に抑え込んだ力を解放する愉楽めいた響きがある。