お母さんの来訪は今回も破天荒な展開となった。といっても何かこれといった騒動が巻き起こったわけではなく文字通り天気の話で、去年来てくれた際、帰宅予定日に台風の直撃を受けたのに引き続いて、今回は手配済みだった航空便の進路をちょうど同時刻に台風14号が横切るという運の無さ。結果予定は一日遅れ、新幹線での来訪ということになった。今回の彼女の滞在中に僕が教えられたのは、孫に会いたい、孫の声が聞きたいとの一心ではるばるやって来たように見えるお母さんでも、やはり心の奥底では、娘の様子を確かめたいという思いが彼女を動かしていたのだな、ということだった。本人が意識するとせざるとにかかわらず、親が最も気に掛けていることがわが子の行く末に他ならないということは、彼女の言動の端々からありありと感じとることができた。中でも彼女が初日の夜に表してくれた言葉は僕には身に余るもので、昔気質の性格に抗ってわざわざそれを口にしてくれた彼女の心の内を思うと、ずっと忘れたくないと思わせるものがあった。一週間前から写真を見せてお母さんが来ることを知らせていた僕らとともに、息子も彼なりに精一杯歓迎して彼女の滞在を楽しんでくれていた。赤ん坊はこの齢にしていったいどれだけの人に幸せを分け与えれば気が済むのだろう。彼がたとえどんなに手がつけられない大人に育っていったとしても、このことだけは忘れないつもりだ。