先週の土曜日に借りてたのを思い出して、今日慌てて見たんだけどさ。
ガープの世界
いやー、これはお寒い映画だったなぁ。主人公の男ってのが、第二次大戦中に従軍看護婦をしていた女(グレン・クローズ)が、意識不明にもかかわらず常に勃起状態だった傷病兵に勤務中に勝手に跨って孕んだ私生児(傷病兵はそのまま昇天)という設定からして寒いんだけどね。それで映画では、そんな母親をはじめ、変人ばかりの主人公たちが悲喜劇(多くは下半身的に纏わる)に見舞われるさまが年代記的に淡々と描かれるんだが、見ているこっちはお前らみたいな変態じゃないから、そんなに淡々とは消化できないわけ。大した感動もないまま、感情だけはそういうしょうもない悲喜劇に突き動かされる、という最悪の映画体験が1時間20分続いたところで、あ、これはあかん、と思い切ってgoo映画であらすじを最後までを読んでやったら、案の定笑えない上に痛々しいオチがついていたみたいで、最後まで見なくて良かったなぁ、と。
太田光があるラジオ番組で、この原作者のジョン・アーヴィングを表敬訪問したときのことを語っていたことがあった。自宅にあげてもらった太田はアーヴィングのことを「私の心の父」とまで呼んで称賛したという。訝るアーヴィングに「私のほかにどんな作家が好きなんだ」と聞かれ「カート・ヴォネガットです」と答えると、「ヴォネガットを読んでいるならお前は信用できる」とか言って玄関まで案内され、高い壁に額に入れて飾ってあるヴォネガットからの手紙を見せて貰ったりしたらしい。こんなエピソードを嬉しそうに話していた太田だったが、次の瞬間相方田中が発した言ってはならない禁断の問いに、それまでの態度を豹変させる。「で、そのアーヴィングは、お前の好きなヴォネガットと比べてどうなの?」。今の今まで楽しそうに思い出に浸っていた太田はそれが嘘だったかのように顔色を変え、「はぁ?ヴォネガットに比べたらアーヴィングなんてクソだよ、クソ!ウンコ以下のウン・コーヴィングだよ」と、アーヴィングへの罵倒を連発、「お前さっきまで心の父とか言ってたじゃねーか」という田中のツッコミも虚しくその激高が収まることはなかった…
アーヴィングの原作を読んだわけではないので公平な評価はできないんだけど、ヴォネガットと比較してしまうのはさすがに酷なのではないかな、とやっぱり僕でも思ってしまう。まあそれでも映画には良いところもあったんだけどね。グレン・クローズは名演だったし(少なくとも1時間20分までは)、ニューハンプシャーの海は綺麗だったし(アメリカ映画で描かれる、東海岸の海がとても好き)。さ、返却してこよっと。