こんな夢を見た。薄暗い地下のバーで高校の同窓会が開かれている。皆が一堂に会するのは卒業して以来初めてなので、名前が一致しない顔もちらほらといる。それは周りも同じらしくお互いの距離を探り合うような当惑した空気が流れている。そこで景気づけにと、各人の自己紹介が始まった。しかも誰かの発案で、単なる自己紹介では味気ないしせっかくだから一発芸を交えて、ということになった。僕は席について隣の旧友と科学と社会の関係について議論をしているが、同時に、傍らで進行する一発芸付きの自己紹介も気になっている。一発芸といっても手持ちの特技があるわけでもないし、いったい何をやろうか。自分はこういうのはとても苦手だし嫌いだ。だいたい誰がこんなセンスのないことを考えたんだ。ただ、横目で見ていると他の連中も大した芸をもっているわけではなさそうだ。むしろ冴のない芸が当人の個性を思い出させる、という皮肉な自己紹介になっている。それでちょっとほっとして、自分は長州力で行こうと決める。12人の参加者の中で自分の順番は最後ということになっているが、このレベルならおおとりでも失笑を買うことはないだろう、と思って少し安心していると11番目の男が猪木をやり始めた。しかもハルク・ホーガンの斧爆弾で舌を出したままエプロン・サイドに蹲る猪木を古館の実況に乗せて完璧にやっている。自分はサソリで相手を弱らせてから名前を叫んでのリキラリアットで決めるという、バッファロー吾郎の二番煎じのようなコンビネーションしか考えていなかったので、急激な不安に襲われる。「やっべ、オレの芸そこまで完成されてねー」という心の叫びが声になったところで、汗まみれになって目が覚めた。