第4幕

兄との決闘に勝利した男は山上で女と再会。瀕死の兄は最後の力で女を殺す。
第4幕の初めに、それまで捨てようとして捨て切れなかった愛の未練を吹っ切るかのように女(レオノーラ)が長いアリアを歌うところがあるんだけど、ここでの拍手が一番大きかった。もうこの世での愛の成就は有り得ない、ならばせめて平安を得たいと、「神よ平和を与えたまえ」を歌う。個人的にもここが最大の感動ポイントで、間近に迫っている死を覚悟し望んですらいる悲痛さにグッとくるものがあった。
ただこのオペラ、壮大なタイトルの割に筋書きの説得力が若干甘い気が…。『運命の力』というくらいなら、悲劇に至る過程の中に人間の思惑や意志を超えた決定論的な因果の連鎖みたいなものがちゃんと描かれてほしい。それがどうにもその人間の意志の段階でこけちゃって悪循環に入っちゃうパターンの繰り返し。例えば神父となって改悛の生活を送っている男(アルヴァーロ)は一旦兄(カルロ)からの決闘の申し込みを断るんだけど、結局引き受けちゃう。その理由が、臆病者と言われてバカにされたから、インカの血を差別されたから、ビンタされたから…。それくらい我慢してほしい…
あと、カルロがアルヴァーロの素性を知るきっかけが、アルヴァーロの小箱の中身を開けて覗いちゃうことなんだけど、その前に「この恥ずべき誘惑よ、立ち去れ」とか5分間位熱唱しながら逡巡するわけ。で、拍手があってその直後に「いや、新しい証拠が見つかるかもしれない」の一言で、あっさり覗いちゃう。お前せめてそれ5分前に気づけと。
他にもあんだけドラマチックに始まった逃避行が幕間を挟んであっさりはぐれてたことになってたり、アルヴァーロとカルロとの間に交わされた永遠の友情の誓いが軽すぎたり。
実は今日は、管弦楽に奥さんの知り合いが出演していて、そのコネで行かせて貰ったのです。だからというわけでは全然ないけど、序曲なんてもう1回聴きたいと思ったくらい迫力があったし、シャファジンスカヤというソプラノ歌手のアリアも感動的なのが多く、オペラ専用に設計された劇場の音響効果も相俟って音楽としてはかなりリアルな体験ができました。台本はどうしようもないしね。
帰りはその奏者ともう1人の知り合いと4人で軽く飲み。明日は著名ピアニストのコンサートの伴奏役、前衛的な交響曲の演奏会などがあるらしい。芸大出のエリートもなかなか大変なのね…。他にも大学の話とか楽器の話とか色々聞けて楽しかった。
機会があったらまた行きたいね〜♪