今日は近場の映画館に本日公開の『THE 有頂天』を見に行ってまいりました。年末から年始にかけて延々と『刑事コロンボ』の放送があってその流れで正月3夜連続の『古畑任三郎ファイナル』を見させられ、元旦には有頂天がそのオマージュともなっている『グランド・ホテル』が放送されて、そして連夜の広告・広告・広告…。見事にフジテレビ=東宝のプロモにハマっているような流れなのですが(コロンボは日テレだけど)…
それはそうと作品自体は、これを見て損したと思う人はほとんどいないと思われるほどの力作でした。我が愛する『12人の優しい日本人』を上回るか、と言われたらさすがに首は縦に振れないけれど、常連の三谷チルドレンが脇に回されるほどの豪華すぎるキャストを、寸分の狂いなく予定調和(preestablished harmony)に向けて演じさせていく手法は見事というほかないもの(ちなみに「予定調和」はライプニッツの用語で、神の業を意味する誉め言葉)。大晦日の夜更けの数時間、一つのホテルで矢継ぎ早に起こるすべてのハプニングが、何人もの人物に対して別々の意味を与えつつ、人々を次の行動に駆り立て、散乱させて、息つく暇なしにまた次のハプニングを招来していく。10人を超える、それぞれに別々の世界を背負った主要登場人物たちをホテルから一歩も出さずに、2時間という現実世界にパッケージングして見せた三谷幸喜の四次元的なプロット術を、「予定調和」と言わずになんと誉めれば良いのでしょう。勿論おそらくは映画の限界に迫る主要人物数の多さから、個々の人物の心理的因果性に若干の歪みが出ていたり、見る側の感情移入が分散気味になってしまうところはあったはあったかもしれないけれど、その手の詮索はこの作品のトータルなエンターテインメント性の前には粗探しの一つに過ぎないのではないでしょうか。
終了後はもう一度観たいような余韻を抱えながらTSUTAYAへフラフラ。他の作品も一気にビデオで見てしまいたい気もするし、グランド・ホテルが観てみたいような気もするけど、さすがに古すぎて置いてないだろうなぁ〜、と思いながら眺めていると、タッタッと喜び勇んで駆けてくる音が。「あったで、あったで!三谷さんコーナーが設けられてあるねん!」おお、なんとそこには彼が脚本や監督をした作品のみならず、グランド・ホテル他の元ネタものまで置いてあるではないですか。なんかもう今日は商業ルートに乗せられっぱなしだなぁと苦笑しつつ、かのグレタ・ガルボさん主演のやつと、奥さんお奨めの『竜馬の妻とその夫と愛人』を借りてきたのでした。
三谷作品を思いつきで3つにカテゴライズしてみると、『優しい日本人』や『有頂天』等、ストーリーが一つの舞台から外に出ない「舞台もの」と、『刑事コロンボ』の自他共に認める影響下にある「探偵もの」、それと『竜馬におまかせ』系の「竜馬もの」があると思うのですが、第3の代表作『竜馬の妻とその夫と愛人』は、坂本竜馬に興味がなかった、というよりアレルギーさえあったこの私でも十分楽しめる快作でした。見終わって数時間、あのオチの意味を考えれば考えるほど、その色んな意味でのユーモアに感動してしまうのだけれど、その色んな意味をここで書けないのが悔しいくらい。オチという意味では、こんな素敵なオチはついぞ目にしたことがなかったかもしれないなぁ。さすが!

竜馬の妻とその夫と愛人 [DVD]

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