ドラマ版『電車男』は、オリジナルがmoderateに思えてしまうほどの激しい展開を見せている。オリジナル版に登場しない人物は10人近くに上り、電車男が吐いた小さな嘘とオタクである素性の告白とが、『嘘』や『誠実』のテーマ軸に沿って巧妙に按配され、それがエルメスの家庭事情を巡る次の展開を誘う、というストーリーで展開していく。これがなかなか巧妙だ。
もちろん原作のストーリー自体は単純な恋愛成就譚といえるもので、もうすでに多くの人が結末まで知ってしまっている事情から、これらの粉飾はドラマ化にとって必須の要件だった。とはいえ、絶妙のキャスティング(特に伊藤淳史の演技は絶賛ものだろう)、飽きさせずに12話もたせそうなストーリー展開等々、製作者には才能を感じずにはいられない。
ところでこのドラマ、扱ってる時代は現代そのものなのだが、各シーンに絶妙に挿入される楽曲が実はどれも古いものばかり。それが妙にノスタルジーをそそるのも、うちらの年代には密かな楽しみになっている。例えば電車男のハッスル・シーンで必ずと言っていいほど流れるC-C-BRomanticが止まらない』、エルメスの父(実は山下真司?)の登場の伏線となった麻倉未稀『ヒーロー』(スクールウォーズのテーマ曲)などなど。監督者は案外自分等よりちょっと上くらいの世代の人なんじゃないだろうか。もうそんな年だよな…