NADVD(生だらアダルティーDVD)

マイケル・ジョーダン / HIS AIRNESS 特別版 [DVD]

値段も安い(2000円)し、パッケージの写真もかっこ悪いしで、最初はこのDVDにあまり期待していなかった。『グレーテスト・ダンク』等のボーナス・トラックに、まだ手元にないお宝シーンがあれば儲けもん、というノリで注文したにすぎなかった。
が、このDVDは期待をはるかに上回る傑作である。
『バスケットボールの長い路を歩き始めた時、私を夢中にさせていたのは、能うかぎり最も偉大な選手になるという考えだった。今、歩いてきた道を振り返るとき、私はこのゲームに対して全く別の評価をもっていることに気づく。それは一つのゲームというものを超えた何かだった。それは私にとって人生の教師だった。』
彼自身によるこの意味深い述懐から始まる本編は、3連覇を達成した後の、98年の2度目の引退までを年代順に扱っている。1時間弱のフィルムには、周知の名シーンの数々が、ぎゅうぎゅうに詰めこまれていて、そこに、この非人間的な業に触れた人々から漏れ、マイクに拾われた驚愕の声たちが重ねられる。
≪強度≫と≪生々しさ≫に溢れたこの過剰な素材を、それをかろうじて表象するにはこれしかない、といった重厚な語りが支えていく。実際、全篇のナレーションは、シェークスピアか欽定訳聖書のような格調を保って流れ、まるで英雄か聖者の奇蹟を物語るように厳粛である。
Creativity, thy name is Michael.(シェークスピアの「弱きもの、汝の名は女なり」 "Frailty, thy name is woman." からの本歌取り)
本作はまた、ハイパーマシンにように考えられてきたジョーダンの「人間的な」側面に光をあてることも忘れない。燃え尽きたスターの一時の気晴らしと揶揄された野球への挑戦が、彼にとって、殺された父との思い出をめぐる心の旅であったのだということを、このビデオは見る者に説得力をもって教えるのである。
過剰なものは表象し得ないということ。ただイコンだけが、それを代理的に指示できるに過ぎないということ。だが、このDVDはまさに、マイケル・ジョーダンというphenomの象徴的なイコンとしての地位を確かにする名作だと言えるだろう。
You gotta love it.
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