鎌倉学園高校がまだ勝ち残っている。準々決勝の藤沢翔陵戦は延長までもつれてTVKの中継も途切れてしまったが、ニュースによれば十二回の裏にサヨナラ勝ちしたらしい。校歌斉唱を録画できなかったことを息子は残念がっていた。
春の大会の横浜高校戦を現地で見て以来、鎌倉学園イカ臭い(といって失礼なら男臭い)あの応援に嵌ってしまった。女性といえばお母さんの声がちょっと混じってるだけの、父兄とOB、野球部員と男子生徒のみで構成された応援歌。それもオラオラした男の押しや色気があるわけではなく、官能性の不足をまじめな人たちがまじめに大声でカバーしようとしているところが潔くて良い。
「パーパパ、パーパパ、パーパパーパパ、パパパパー、ソーレいそざきっ!」
「たーまの〜、たーまの〜、たーまの〜」
妻が云うところの「クセになる」ノリがあるから、家の中や車の中で誰かが口ずさむととつい釣られて一緒に歌ってしまう。そして気づけば気分も少し前向きになっていたりするからまた誰かが口ずさむという、この繰り返し。磯崎君と玉野君の応援歌をこれだけ歌い込んでるのは、関係者以外ではひょっとするとウチくらいかもしれない。
プロ注目のスターがいるわけでもない選手層で頑張っているけどどこまで勝ち上がれるのかな。「甲子園に行きたい」と一口に言っても、遠く先の見えない夢を具体的な目標に変えていくことは簡単ではない。鎌倉学園の監督は去年の春に、選手たちを実際に甲子園に連れていってそこの空気を吸わせることから始めたらしい。甲子園に行くということは、この空気に打球の音を響かせることだぞと。一年半たって胸中のイメージは手ざわりを増したのだろうか。
心の障壁を穿つというもっとも困難な努力が、そこに手を貸したり、その波に浴したいと思う人たちを球場に運んでくる。思惑の交錯する湿った熱気が日本中に息苦しく立ち込めている。